スパソリリオンという植物

スパソリリオンsp.珍しい植物に花が咲きました。おそらくですがスパソリリオン属の一種で、中国の広西チワン族自治区で採取された植物だそうです。こちらは「アクアショップ グッディ」さんから購入したもので、インボイス名だと「キクロポゴンsp.」でした。正体不明のものは、輸入時のインボイスの名前で販売するのが、正式な流儀です。憶測で名前を付けたり、勝手に名前を変えて販売することは混乱の元になります。

受け取って植え付けるときに、ランではないのは間違いないものの、はて、なんの仲間だろう? という疑問がわきました。キクロポゴンというのは中南米に分布するラン科の植物で、ネジバナに近い地生ランです。根茎の状態からして違いましたが、鉛筆程の地下茎と節から伸びる細く白い根っこに何やらピンとくるものがありました。

地下茎と根の様子が、どことなくトラデスカンチアを思わせます。葉の雰囲気もツユクサ科の熱帯植物に割とある感じなので、ツユクサ科かもしれないと思いました。それと同時に葉の雰囲気からショウガ科の何かである可能性も考えました。同様に葉模様からクズウコン科の可能性も考慮しましたが、可能性は低いだろうと思いました。

しかしショウガ科の植物は、何かしら根茎に香りがあります。良い匂い、嫌なにおいどちらもありますが、とにかく揮発性の香り成分がある。ですが、このキクロポゴンsp.にはそれがありませんでした。草っぽい匂いがするだけで、香り成分らしきものはなさそうでした。

それからしばらくは多湿環境で育てていたのですが、一ヶ月程で地下から新芽を出してきて、鉢底から根がはみ出る程成長しました。慌てて植え替えと株分けを行って、新芽の方を部屋の中に出して常湿環境で育ててみました。室内なので最低気温も10℃程度は保てていたと思います。

特に萎れたり枯れたりすることもなく、どんどん大きな葉を出して成長して、5月下旬にはつぼみを付けてくれました。ここからあちこち情報を探し歩いて、どうやらスパソリリオン属(Spatholirion)の一種であるらしいことが分かりました。

スパソリリオンの花決め手となったのがこの花です。花の構造はツユクサ科のトラデスカンチアなどと良く似ており、花だけで見れば南米だけに分布するトリポガンドラなどと似ています。しかし採取された地域と草姿、つぼみを覆う産毛の様子などから、スパソリリオンだろうと判断できました。

葉模様の美しさから気に入って育てていたものですが、花が咲いてみるとこれまた瑠璃色で可愛らしい花です。黄色いおしべがコントラスト良く、なかなか見栄えのする花に思えます。もう一回りか二回り大きな花になれば……とも思いますが、十分に成長すれば枝分かれしたボリュームのある花茎を付けてくれるように思うので、これからに期待します。

参考にしたサイトの情報1 こちらは北ベトナムで発見された新種の Spatholirion の記事です。

参考にしたサイトの情報2 こちらはチワン族自治区で採取された、Spatholirion sp. の標本です。

おそらくですが、下のサイトの標本個体と手元にある植物は同一では無いか? と期待しています。まだ学名が決まっていないようですが、どんな名前が付くのでしょうか。

入手してからずっとモヤモヤしていた気持ちがすっきりしました。タネが取れそうなので蒔いてみて、葉模様に変異が出るのかどうか調べてみたいと思います。